コロナ回復時に向け“いま学ぶ”富裕層。JNTOが膨大なリサーチをして捉えた世界の富裕層の姿、行動の実態から、JNTOの小林大祐氏に伺ったお話を前、後編でお届けしている。前編は、JNTOがターゲットとしている富裕旅行者の定義づけと分類について。後編となる今回は、世界の富裕層が具体的に何を求めて旅行をしているのかについてご紹介していく。
—富裕層の方たちは旅行先にどのようなことを求めているのでしょうか?
最近のトレンドとしては、「本物の体験」を求める方が多いです。インバウンド業界でよく話題に上っている「モノ消費からコト消費」という傾向が、富裕層マーケットではより顕著に出てきます。お金を持っているので欲しいものは何でも手に入るわけですが、体験となるとその場所に行かないとできないからです。これまで富裕層に人気だったのは、イタリアやフランスといった誰もが知る観光地でしたが、最近ではキューバやアイスランド、クロアチアなど、これまで注目を集めてこなかった国の人気が上昇しています。富裕旅行者の間では、行ったことのない、何があるかもわからない国で新しい体験を求める傾向が強くなってきていて、日本も富裕層に人気上昇中の旅行先にランクインしています。
—では、旅行先としての日本に求めているものは何でしょうか?
富裕層が日本旅行に求めているのは食や文化、ホスピタリティなどです。訪日旅行をした富裕層に日本旅行を選んだ理由を尋ねたところ、「本物の日本文化・伝統に触れたい」「日本人のライフスタイルに触れたい」「日本食を楽しみたい」といったものが上位に入っていました。そのため、日本ならではの魅力や日本でしか体験できないことを打ち出していくことが重要なのです。私が中東に行った時に聞いた話では、現地では日本のことを「Planet Japan」と称することがあるようです。中東の人たちは日本に対して、地球外の別の惑星のように未知なる国だというイメージを持っているそうです。日本はすごく神秘的で興味があるし、極東の小さな国なのに独特な文化や歴史を持っているからすごいという見方をされています。一方で遠すぎてよくわからないため、旅行先として考えるのは難しいと考える人たちも多い。だからこそいかに魅力的な形でわかりやすく紹介するのかがポイントだと思います。
富裕層に刺さる魅力的なコンテンツとは?
—どんな観光コンテンツであれば富裕層の方たちに来てもらえるのでしょうか?
通常のインバウンド旅行者であれば、日本に来たからこそできる、価値のある観光コンテンツがあれば来てもらえます。ただ、富裕層はそれだけではダメで、価値を提供する際に工夫が必要とされます。どんなにいい食材があっても料理人が下手であれば美味しくないのと同じで、どんなに価値のあるコンテンツでも、提供の仕方が悪いとその価値をちゃんとわかってはもらえません。例えば各地域の工房で伝統工芸品を実際に作って体験するというコンテンツがありますが、お弟子さんや一般の人が教えることが多いと思います。ところが、富裕層は本物のプロから教わりたいという気持ちが強いので、例えば人間国宝から直接手ほどきを受けて作るなど、値段は高くても一歩踏み込んだ特別なサービスの提供が必要になります。次に、「融通のきく体制」もポイントになります。富裕層は、貸し切りたいとか、普段は非公開になっているところに入りたいなどの要求が強く、特別感を大事にしています。一般の旅行者と同じものを見るのではなく、自分だけのために開けてほしい。そういった高い要求のオーダーがあるので、柔軟に対応できるような体制を整えておくことも重要です。
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